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幼い頃思い描いてた全てはかなえられる

YUKI、第3子の男児を出産



元JUDY AND MARYのボーカル、YUKI(37)が1日、第3児となる男児を出産したことを公式HPで発表した。母子ともに健康で、今まで通り家族の生活を最優先としたペースで仕事を続けていく。

http://www.sanspo.com/geino/news
/090602/gnb0906020502003-n1.htm



普段は音楽のニュースは取り上げないのですが、YUKIさんにはちょっと思い出があります。


私は時々、CS放送の音楽専門チャンネルである「スペースシャワーTV」をラジオというかBGMの感覚で付けっぱなしにしていることがあります。そのまま本を読んだりしているのですが、気になる曲があれば画面に眼を向けます。

もう何年も前のことなのですが、YUKIさんの『ドラマチック』という曲が流れていて、読んでいた新聞から眼を離して画面に見入りました。歌を聞いて涙が浮かんだのは久々でした。


ジュディー・アンド・マリーが『POWER OF LOVE』という曲でデビューしたとき、YUKIさんのようなかわいくてエキセントリックな雰囲気のボーカリストはそれほどたくさんいませんでした。しかしそれは一見して、「人気者」を生み出すための大人の仕掛けとして使われている印象がありました。実際その後、バンドのボーカル以外のメンバーは全員演奏や音楽に詳しい皮パンに長髪の男性ミュージシャンで、ボーカルだけがかわいい女の子というバンドが量産されては消えていきました。しかし、YUKIさんがそれらのボーカルと違って消えずに今も人々の心を離さないのは、ほとんどの曲の歌詞を作っていたからだと思います。

そしてジュディー・アンド・マリーが解散してソロになるや、その才能を一気に開花させていきました。

歌は個人にうったえかけるエンターテイメントのジャンルです。だから同じ曲でも共鳴する人もいればしない人もいる。音階という音の高低の組み合わせに「ポエム」をのせるのだから当然です。

そして、ソロでの2ndシングル『プリズム』を聴いて、ぼくは個人的にものすごい共鳴を受けました。

私はその頃、ある人とふたりで夢を追っていました。順調に進んでいたのですが、ある時ふたりでの活動を休止し、私はソロになりました。これは私のわがままによって行われた休止でした。ケンカ別れじゃなくて、私の気持ちを相方が汲み取ってくれての休止でした。もうこれから一生、誰かと組んでこの仕事をすることは、遊び以外ではないんだなって思いました。

しかし、その途端、私に、数人のライバルだった人たちから「一緒にやらないか?」という電話がかかってきました。とてもありがたい誘いではあったけれど、私の相方はひとりなので、すべて断りました。





『プリズム』

花咲く丘まで 口笛吹いてこう

いじわるな人が とやかく言うけれど

私は、どこかで まちがえたかしら?

今はわからない

答えは 空の上。




まちがえていると、たくさんの人から言われました。でも、答えはまだ、空の上、今はわからない。

現在だってわからない。わかるはずもないんです。

でもそうやって私の心に共鳴する歌詞を書くYUKIさんに、なんと表現していいか分からない共感を覚えました。


それからしばらくたった、ある日、『ドラマチック』を聴きました。





『ドラマチック』

作詞・YUKI

作曲・蔦谷好位置

唄・YUKI


四つ葉のクローバー 探しながら君の顔

ちらり盗み見ては目をそらす

あれからどれくらい 夜を越えたの?

苦手な処から逃げてるの?

服を着替えて窓の外を見てみよう

深呼吸して見える景色は違うはずだわ

こわれた大切なものと

いつか又あえる日がくるかしら

残した傷跡が消えない

それぞれの場所まで  もう行かなくっちゃ




幼い頃思い描いてた全てはかなえられたかのように見えたのに




失くした約束は星に

思い出はとけないでそばにある

今 心は清く光る 涙で見えなくなる

ささやかな流れ星をひとつぶ

手の平にあげるから

こわれた大切なものと

いつか又あえる日がくるかしら

残したくちづけは消えない

それぞれの場所まで

もう行かなくっちゃ




2005年03月17日。YUKIさんの1歳の長男が亡くなりました。乳幼児突然死症候群です。

YUKIさんと夫のYO-KINGさんはホームページ内でそのことについて語っていました。

詳しい文章は憶えていませんが、「私たちの子どもが天国に行きました」という内容でした。

冷たいくらい淡々とした文章です。彼らはミュージシャンという芸人です。だから曲で表現しなければならないという掟なんです。

生き行く者と死に行く者は、生き行く者の混乱によって様々に交錯したのだと思います。でも、行かなくちゃ。余韻はもう終わり。それぞれの場所で、いつかまた会う日まで、頑張っていかなくちゃ。悲しみをよりいっそう際立たせる明るいメロディは、YUKIさんの悲しみと、前向きさを過剰なくらい表現しきっています。



みなさんは、誰かのために四つ葉のクローバーを探したことがありますか? 四つ葉のクローバーはシロツメグサの畸形で、自然界では10万分の1でしか採取することができないと、統計学上では言われています。でも四つ葉のクローバーは「気持ち」で見つけられます。それも、ものの1分で。だって、私は見つけたことがあるから。

こういう歌詞が書けるYUKIさんは、それぞれが行かなくちゃいけない場所で、頑張って、いずれ再び、どこか同じ場所で幸せに暮らせるに決まっています。


そして今、新しい命を授かりました。


幼い頃思い描いてた全てはかなえられる。そこまでにたくさんの苦労と犠牲はあるけれど。
しかし、苦手な処から逃げてるだけでは、それはかないません。
受け止めなければいけない現実はあります。
それはとてもつらいものかもしれません。
しかし、そこに立ち止まったままじゃなくて、それぞれの場所に行ける人は、思い描いてた全てはかなえられる。


YUKIさんの男の子が生まれたニュースを見て、そんなことを思いました。

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